『スラムドッグ$ミリオネア』レビュー
昨日、プラダのセールが不発だった後に映画『スラムドッグ$ミリオネア』(以下、本作)を観に行きました。一部ネタバレありです。
総評: 75/100 “運命”を上手く活かした作品。音楽も素晴らしい。今年を代表する一本に入る佳作。
本作のアイデンティティはインドを舞台にしていることであり、それを上手く活かしたことが本作の成功に繋がっていると思う。
インドについての現状を詳しく知る人は多くはないと思われるが、一般のイメージとしては近年経済成長が目覚しい、人口爆発が懸念されている、人種と宗教の坩堝、カースト制に代表される貧富の差が大きい、といったところであろう。本作はこのようなインドであるからこそ物語として成り立っている。(もともと映画自体フィクションだが、最低限の実現可能性は必要であろう。)
本作は、多くの知識層が全く歯が立たずに敗れ去って行った大金を稼げるクイズ番組で初めて最終問題まで残った、スラム出身で無学の若造が何故答えを知っていたかが徐々に明らかになっていく構成だ。 日本でもおなじみの正解率25%の、知識量以外に運でもある程度戦えるクイズだけにその謎が気になるのだが、全ての答えを若造がこれまでの過酷な人生で知ることになっていたというアイデアは面白い。過酷な人生をもっと暗く描くことは出来るのだが、そこをむしろコメディ風に軽く流しているところがスピード感を生み、本作の成功に繋がっていると思う。
過酷な人生は文字通り世界中に存在しており、所謂南北問題的なレトリックでそれを強調してもただの問題提起で終わるだけだ。過酷な状況から道を踏み外さず這い上がろうとするからこそ人は若造を応援したくなるのだ(最も当人にすれば愛のためだろうが)。インドの抱える闇を描きつつも深入りしない点が成功の要因だろう。
若造が問題の答えを知った理由がどれも面白くて飽きずに観ることが出来たが、ラストについてはひとつ注文をつけたい。
最終問題に正解したことは敢えてカットしたほうが良かったのでは、と思う。若造にとって大金を得ることはそれほど大きな目的ではないのだから、正否がどうだったかということを観客に敢えて考えさせたほうが面白かったように思える。
全体的に濃い映画であるが、外せない作品であると思う。
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